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Selfishly

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11月 「エドワード編」

 ★ 11月 そしてまたある事に気づく
                H17,11,23 18:00

《 エドワード編 》

あいつは、嫌な上司だ・・・った。
最近は 『変な上司』だと思う。

めったに顔を合わせないけど、
合わせた時に嫌味を言われなかった事がない!
余裕を構して、こちらを嘗めてかかるような態度も嫌だ。

まぁ、格好いい奴だとは思う。
(俺が言ったんじゃーないぞ!皆の意見だ)
若くてエリートで、金持ちだ。
女性には、俺らと接する時と全然違う態度だ!
すかした野郎だと思う。
優しくしてくる時には、必ず何か裏がある 胡散臭い奴。
だから、アルが何と言おうが
俺は あいつが嫌いだし、苦手だ。

でも、今は「~だった。」になった。
だって、近頃のあいつは 前とは変わってて、
正直、とまどう事が多い。
なんで、今は『変な上司』と思うようになった。

それに、・・・悪い奴じゃーないと思うようになった。

「鋼の。どれにする?」
優しく微笑みながら、ロイは綺麗な写真がついている
メニューをエドに示してくる。
俺は、色とりどりの美味しそうなケーキが乗っているメニューを
真剣に覗き込んでいる。
「うっわ~、すごいなー。
 ううう~、どれも美味しそうで決めらんない・・・。」
悩んでいる俺を、何が そんなに嬉しいのかニコニコと
あいつが見ている。
正直、こういう時は調子が狂って困る。

「悩まなくとも、食べたいもの全部頼んだらいいじゃないか。」
「そんなわけにいくか!
 いくら俺でも、食べたい物全部頼んだら、食いきれねー。」
そう言うと、『おやっ』という顔をして、
「食べ切れなかったら、持って帰るように頼むから
 心配しなくて構わないよ。」と、またニコニコと笑ってる。

『ううう~、何か調子狂うよなー。』
大佐は 最近、何だか色んな表情を俺に見せるようになった。
今までは、嫌味な すかした表情ばかりだったのに、
近頃では、司令部に居るときも、他の奴がいるときでも
俺に向けるときの表情は、前とは全然違う・・・。

『まぁ、確かに 以前は二人の時には
 たまにあったけど・・・。』
でも、ここまで頻繁だっただろうか?

エドワードは、自分が無意識に告げた一言が大佐の態度を変えた事には
気づいていないから、変に思うのも仕方ない事だった。

「これなんか、どうかね?」
「えっ、どれ?」
俺は、大佐が指をさしたケーキを見ようと
テーブルに乗り出した。

その写真のケーキは、旬の果物が色とりどりに飾られており、
とても美味しそうに見える。
「へっ~、すごい豪華なケーキだなー。」
と写真を見ながら感心していると、
「これはね。
 この店の看板メニューで、この時期しか出ないんだ。」
と説明しながら、テーブルに屈んでくる。
そうすると、もともとお洒落なカフェの小さなテーブルでは、
自分の顔と大佐の顔が、すっごく近づいてしまう。
傍から見ると、寄り添って見えるだろう。

「それにね。これは・・。」と説明を続ける大佐に、
急に身体を離すのも変に思われそうで、
動けない俺に、どうしようかと思っていた矢先。

「ロイ!
 久しぶりね。」と声をかけながら近づいてきた女性がいた。
大佐は、不承不承姿勢を正し、その女性に顔だけ振り返った。
『あれ?
 今、大佐。
 何か、すーごく不機嫌そうな顔した?』
次の一瞬には、ごく普通の表情を相手に向けて挨拶を返していた。
「やぁ、キャスリーン。
 元気そうだね。」
「そういう貴方も元気そうね。
 最近は とんとお姿を見ないから心配していたのよ。」

俺の目から見ても、
その女性は綺麗な人だった。
少し茶が入っている金色の髪に、
綺麗に化粧された顔。
服も、すごくお洒落な感じで
いかにも大佐が好きそうな女性だ。

「今度は いつ、時間が空くのかしら?」
と、ねだるような瞳で大佐を見る。
「すまないね。
 これからは忙しい事ばかりで、
 時間は空かないんだ。」
ニッコリと彼女に微笑むと、話は終わったとばかりに
また、俺の方を向き直って ケーキの説明をしようとする。

「それでね、鋼の。
 これは、数が限定ですぐに売れるのでも有名なんだよ。」
と、俺の顔を覗き込むように話してくる。
「う、うん。」
俺は、女性の人が気になってちらちらと
その人と大佐を見て返事をする。

「・・・ふ~ん、そう言う訳ね。
 わかったわ、お邪魔は致しません。
 
 ごめんなさいね、本物の金髪さん。」
彼女は、そう言うと
するりと去っていった。

その後、そのケーキはロイがきちんと店に頼んで
エドワードの分を置いててくれており、
売り切れの札が かかっていたにも関わらず、
食べる事が出来た。
すごく美味しかった・・・。
で、食べ切れなかった分は
(俺が頼んだんじゃーない!
  大佐が 勝手に次々と頼んだんだ!)
お持ち帰りにしてもらった。

大佐と街に出たり、食事に行くと
大抵は、沢山の女性から頻繁に声がかかる。
以前は、その度に足を止めさせられて
延々と、大佐と女性達の会話を聞かせられたりして
『プレイボーイめ!』とか思いながら待ってたり、
黙々と食事を進めたりして時間をつぶしていたけど、

最近は、そんな事はなくなった・・・。
声をかけられるのは変わらないけど、
その後の大佐の態度が違って、
挨拶をすると話を切り上げてしまう。
そして、俺の方に意識を切り替えて
話の続きをしたり、歩くのを促したり。
その度に、今の女性のような反応を返されたり、
にらまれたり・・・!(なんで俺が!)

それに、気のせいじゃーないと思うけど
大佐は近頃、良く俺を見てる。
別に話しかけるでもなく、何か用があるわけでもなさそうだ。
俺は、文献や本を読んでたりすると
周りに気づかない事も多いから、
気づくと、執務室や、図書館で
いつ来たのか解らない間に大佐が居て、
じっと俺を見ている。
「何か用?」と声をかけても
「別に」と言って仕事に戻ったり、去っていったりする。

1番驚いたのが、大佐の家で居候させてもらってた時、
リビングで本を読んでいる間に転寝してたんだろう俺が
目を覚ますと、
なんと!
大佐に膝枕してもらってた!!
「わー!!
 なんだ??」
慌てて飛び起きた俺に、大佐は特に驚く風でもなく
「そんなに慌てて起きなくてもいいじゃないか。
 病み上がりで疲れてるんだろうから、
 もう少し、ゆっくり寝てたらどうかな?」
なんて、膝をポンポンと手でたたいて誘ってくる。
とんでもないと首をぶんぶんと横に振ると、
さも残念そうに「そうか・・・。」とがっくりとしている。
なんか、俺が悪いみたいじゃーないか!

大佐の家に俺が居る時、大佐は帰ってきて居る間は
やたらと俺に構って付いてくる。
料理をしている時も 心配なのか 傍に張り付いて
やたらと手伝いたがる。
「鋼の。
 何か手伝う事はないかな?」
「ないよ。
 もう、盛り付けるだけだし。」
「・・・そうか。
 なら! 皿でも出そうか。」といそいそと棚に向かう。

「えっ、いいって!
 それに大佐、シチューは皿に盛れないだろー!
 出すなら、シチューボウル!!」
「そ、そうだな。
 わかったシチューボールだな。」と
 普段使ってないのがまるわかりの行動で、
 あっちこっちの棚を開ける。

「大佐、ボールは上!
 右から2番目の棚の中。」
数日使わせてもらう内に、すっかりと把握している俺が
教えてやるんで、2度手間なんだけどな・・。
「あった!  これだな。」
と嬉しそうに3枚持ってくる姿を見ると
なんか、邪険に扱いにくい。

それに・・・、ちゃんとアルの分を持ってきてくれるのも
嬉しいし・・・。

そんなこんなで、家に居る時には 
いつも二人で分け合ってやっていた。
アルは、めずらしくも自分がとは言い出さないで
出てこないし・・・。
まぁ、結構 楽しかったからいいんだけど。
なんか、司令部では見れないような
ちょっとかっこ悪い所も嫌いじゃーないしな。

でも、朝の寝起きの悪いのだけは勘弁して欲しい!
毎日、俺が起こしに行くまでは絶対に起きてこない。

「大佐! 起きろってばー。
 早くしないと、飯くえないぞー。」
叫んでも起きない大佐を、ゆさゆさとゆすって見たり、
シーツを剥がしてみたりして起こす。
まぁ、それ位ならいいんだけど
寝惚けてるのか、
起こそうとすると、引っ張り込まれて抱きついてくるのには
参った・・・。
1日目に ビックリして、アルに代わって貰う様に頼んだのに
アルの奴、「大佐って、寝起きわるいんだね~。」とか
言うだけで、代わってくれない。
しょうがないから、1週間起こすのは俺の役目だった。

毎朝、抱きつかれるのに文句を言うと、
「鋼のは、なかなか抱き心地が良いねー。」と
笑うだけで取り合いもしない!
腹が立って、翌日からは起こさないぞ!っと
思ったけど、居候の身では出来にくかった。

なんで、仕方なく1週間我慢して起こすことにした。
慣れてくると、コツが解ってきて、
どうやら 数分大人しく抱きつかせてると
勝手に目が覚めるようだ。
「おはよう鋼の。
 今日も ありがとう。」
ニコニコと さわやかに微笑まれると、
文句も言いにくいから、
「早くしろよ・・・。」とだけ言って
また、朝食の準備に戻るようにした。

最後の日は、ちょっと感じが違ったけど・・・。
その日も起こしに行くと、ベットに引っ張り込まれて
抱きしめられる。
ここまでは、毎朝と変わらなかったけど
その日は、ベットに押し付けられて
気づくと 大佐が上から覗くように俺を見ている。
「大佐?」
今日は、目が覚めんのが早いな~と思っていたら、
「・・・鋼の。」
とかすれた声で呼んでくる。
「どうしたんだよ?
 起きたんなら、早くどけよ。」
 押しやろうと力を軽く入れてみても
 大佐の身体は ビクともしない。
 

「もう、行ってしまうんだな・・・。」
せつなそうな、苦しそうな表情を浮かべて俺をみる。
「なんだよ、あんた。
 昨日の食事に行ったときから、何か変だぜ?

 何かあったのか?
 俺でよければ聞くけど?」
心配になって聞く俺の肩に顔をうずめて、身体を預けてくる。
「おい!?」
体格が違うから、大佐に そうされると重い・・・。
「しばらくだけこうしていてくれ。
 すぐに起きるから。」
顔を伏せたまま そう言うんで、
「・・・うん。」と返事してじっとして待っていた。
何か首筋に 大佐の息がかかって くすぐったい。
それに、大佐って体温高いんだなー、
身体が すっごく熱いし。

そんな事を考えていると、急に大佐が起き出して
俺を放すと、
「ありがとう、鋼の。
 先に降りといてくれ、
 シャワーを浴びてから行くから。」と
風呂場に入っていく。
「えっ、おい。
 時間ないんだぞー!」と慌てて声をかけると
扉の向こうから、
『わかってる。
 すぐ済ますから』と返事が返ってくる。
仕方ないから、俺は先に降りて準備をして待っていた。
大佐・・・、この家に一人で寂しいのかもな。
俺には アルがいるからなー。

キッチンに入ると、準備を整えて待っているアルが
座っていた。
「どうしたの兄さん?
 遅かったね?
 大佐、まだ起きてないの?」
鎧の首を傾げて、聞いてくるアルに
「起きてる。
 シャワー浴びたら降りてくるって。」
先に食事をする為に、座ってパンに手を伸ばす俺に、
「シャワー? 珍しいね。
 大佐、夜にいつもお風呂に入るのに。」
「そうだな、
 綺麗好きなんだろうなー。」

(「えっ、それは何か違うと思うけど・・・」)と
思ったアルフォンスだが、
深く追求するわけにも行かず、
黙って兄が、大盛に食事をするのを見つめていた。
あらかた食事を終わり時計を見る。
「まずい、時間だ!
 大佐遅いんだよ~!
 しゃーねぇ、アル片付けろ。
 俺は、大佐の分を包む。」
「うん、わかった。
 もう、ハボック少尉が着く時間だものね。」
バタバタと片付け初めて終わった頃、
2階から やっと、ドタバタと降りてくる音が聞こえてきた。
「鋼の、朝食!」
髪もまだきちんと拭いてないのか、雫を軍服に滴らせて
息も荒く話す男に、
「無理! そんな時間ない。」
無情にも言い切るエドワード。
「そ、そんな~。」
情けなさそうな表情でエドワードを見つめる大佐に、
「自分が悪いんだろ!
 俺が 起こしに行ってやったのに。」
と不満顔で言いやる。
「いや、君が悪いんだよ・・・、
 君があんまりにも・・・・」後の方は 
ごにょごにょと大佐の口の中で呟かれてて
良く聞こえない。
「なんで、俺が・・!」と言い返そうとした時に
丁度、ハボックの到着が知らされた。

「来た!
 ほれ大佐、弁当にしたから 車で食べろ。」
「は、鋼の~。」
感動の余り、ウルウル瞳をさせている大佐を
ほって、荷物を持つと
エドワードはさっさと玄関に向かって行った。

そんな事を思い浮かべてみると、
結構、大佐が 最初の印象とは違う奴に思えてくる。
冷たい奴かと思ってたけど、
俺に真剣に怒ってくれる位熱かったり、
計算高い奴かと思えば、
俺の一言で ウロウロしたり、一喜一憂してたり。
格好つけなクセに、情けない所も一杯あって、
今は、別に大佐の事が そんなにも嫌いじゃーないかも。
まぁ、ちょっと、アルに比べればほ~んのちょっとだけど、
少しばかり、好きかもな。
まぁ、ちょっとだけだけどな・・・。



[ あとがき ]

今回のODAIは ロイ編とエド編に分かれて出来上がり。
楽しく書けたのは、エド編の方~。
ロイ編は 苦戦した・・・。

え~っと、気がつかれた方もいると思いますが、
大佐は、絶対に寝起き良いほうです。
エドの時には、狸寝入りっすね。
最後の日は、ご想像どうり(何の!?)。
大佐の自業自得です。(笑)
朝から、(朝だから?)
元気なロイさんは、まだまだ若いって事ですよね。
こんな事書いて喜んでる私は、ただのお馬鹿っす。
お目汚しで申し訳ない!!



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